漫画を濃くレビュー・感想・考察

『弁護士のくず』(漫画)の感想・レビュー

      2018/12/27

「依頼人は嘘をつく」。人の本音は、真実はどこにあるのか。弁護士のクズが暴く。

■巻数

「弁護士のくず」既刊10巻完結

「弁護士のくず 第二審」既刊11巻完結

■作者

井浦秀夫

■紹介

人権派で知られる『白石誠法律事務所』に勤める弁護士の九頭元人(くずもとひと)は依頼人に対して敬語も使わない所か鼻ほじりながら不躾な質問も平気でする(例:セクハラの相談をしてきた依頼者に対して「チチ揉まれて気持ちよかった?」と訊くなど・・・)。弁護士の倫理規定違反スレスレな行動や言動もあり同僚や他の事務所の同業者等から軽蔑されることもしばしば。だが、実はかなりの人情派で、弱者を放っておけない優しさも持ち合わせている。そんな彼の所には離婚、相続、セクハラ、パワハラ、冤罪、詐欺など様々な依頼が飛び込んでくる。

人は自分が勝つ為なら平気で嘘をつく。依頼の裏に潜む様々な人間模様と隠された真実を暴き、揉め事(や事件)を解決していく。 弁護士の間で「依頼人は嘘をつく」は常識らしい。「こんなことされて~!酷いですよね!訴えたいです!」ふむふむ、確かに酷い奴だ!こりゃ~訴えれば絶対勝てるぞ。しかしいざ相手の言い分を聞くと、おや?聞いていた話と違うぞ。酷いのは・・・むしろ依頼人の方じゃん! と、こんなことはショッチュウで、弁護士は常に何が真実かを見極めなければならない(嘘とわかったまま弁護する人もいるだろうが・・・)。

クズ弁護士は当事者たちの話を鵜呑みにしない。じっくりと話を聞き、ちょっとした矛盾点を突く。そして本音と真実を引き出して解決に導く。本作のテーマは法律論や裁判よりも人対人の話し合いに重点を置いたヒューマンドラマだ。 エピソードは案件ごとに毎回1話~8話程度で完結する。一般民事が多いが、たまに刑事事件の弁護もする。裁判に発展することもあれば、話し合いだけで和解することも多い。基本はギャグがベースで毎度オチもある。画力は低く稚拙だが、その分をカバーするだけの話の面白さがある。コマ割りが小さく文字が多いので時間はかかるがじっくり読み込むだけの価値は十分ある。

 

 

 

 

 

 

 

 

■こんな人におススメ・・・

  • 法律、裁判の漫画が読みたい
  • 善玉・悪玉を完全に分けた勧善懲悪ではない話が良い 
  • ズバズバと率直に何でも言う痛快な主人公がイイ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ここからネタバレ含むレビュー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数あるエピソードの中で私が好きだった話をご紹介。

まずは、10巻に収録されている『人の裁き』。刑事事件を扱った話だけど、裁判員裁判の問題点を浮き彫りにして警鐘を鳴らすというメッセージ性があり、考えさせられた。実は身内に弁護士がいるのだが、彼は裁判員裁判に反対。曰く「裁判員は裁判官にかかる負担を一般国民に分散させる為だけの制度」とのこと。裁判員は法律の知識も何もない単なる一般人。法律だ判例だ関係なく、感情論で「死刑!」と言ってしまう。

弁護士のくず
事件の背景も関係ない。「人殺したから死刑」と短絡的な考えの裁判員。現実でも十分あり得る考え。

弁護士のくず それまでなら死刑はあり得なかったが、裁判員なら・・・

これ、漫画だから現実味ないけど、実際に起こる可能性大。『人の裁き』ではホームレスになってしまった中年男性が意図せず人を刺して死なせてしまったという事件だが、もしこのニュースをTVで見たとしたら、(おそらく“たったパン一個で奪われた若い命”なんてテロップがつくだろうし)私も「パン一個で殺人って・・・こんなやつ死刑にしろ!」と思ってしまうだろう。それが素人の感覚というものだ。

また、この話では一度ホームレスになってしまった男性が社会復帰できる可能性がほぼないという社会問題もを取り上げている点にも注目だ。(「弁護士のくず」では、ほかにもドラッグ、パワハラ、チカン冤罪、等時事ネタのような話も多かった。)氷谷令検事との対決も見もので、大抵はクズ弁護士が勝つことが多い中、一切ぶれなかった(訴因変更しなかった)ことも、作者が主人公ばかりに偏らない姿勢が見えてよかった。
※どんな理由でも人が死んでしまったという重大な事実を鑑みた結果なのかも。

もう一つ好きなエピソードは第二審の9巻に収録されている『銭と色の力学』という話。31歳の色気ムンムンの美女と60代の中年金持ち男が結婚してすぐに男が亡くなり莫大な遺産をめぐる争いが起るという内容だが、「年の差婚」「色気のある美女」「結婚してすぐに死亡」というセンセーショナルなニュースに、世間の目も、担当の弁護士でさえ「遺産目当ての殺人!?」と疑う。だが実はその女の正体は生育環境に恵まれず、今も母親(←毒)の面倒を看るために仕事を探す(クビになったのは前の会社の社長にレイプされたのが原因)苦労人だった。

弁護士のくず

世間に植え付けられたイメージを覆すのは並大抵なことではない。

しかも二人は実は純粋に好き合った関係だった。この男も過去に大儲けしマスコミから銭ゲバ扱いされていた。 私たちは見たり聞いたりしたことだけの表面的な事だけを信じてしまうことが多々ある。特にマスコミのような(ある意味での)権力が伝える報道はそれ全て真実だと誰もが思うだろう(彼らは人々が食いつきそうなネタを誇張したり曲解したりして報道することが少なくない)。だが実際は事実が180度違う可能性があることも念頭に置かなければならない。本作で作者は「常に事実を正確に見極める必要がある」ことを説いているのだろう。

弁護士のくず

どこかで聞いたことのあるような事件・・・。世間から大バッシングを受けたあの人も実はこうだったのかな・・・

弁護士のくず

実は純愛だった。

 

最後に・・・

弁護士のくず

 

弁護士のくず

司法試験制度が変わり、軒下弁護士のようにどこの法律事務所にも雇ってもらえず、仕方がなく『ノキ弁』になる弁護士が増えた事も本作で取り上げている。法科大学院制度の導入により弁護士は数だけ増えて質が低下したと嘆く人も多いと聞く。このようなタイムリーな話をユーモアを交えて描くのも作者のアイロニーたっぷりな感じが出てよかった。 数か月前、第二審が完結した。最後は打ち切りだったのかな~・・・終わり方もちょっとあっけない感じたっだ。お疲れさまでした。

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