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『自殺島』 の感想・レビュー

      2018/12/27

突然謎の孤島に送り込まれた自殺未遂者達は極限のサバイバル生活を通して生と死を見つめなおす。

■巻数

既刊14巻 連載中

■作者

森恒二

■紹介

主人公セイは自殺未遂を繰り返した末に「生きる義務」を放棄した意思を示す書類にサインをする。病院のベッドの上で意識を失ったセイは、目が覚めた時、自分がまだ生きており、そして自分と同じ未遂者達が周囲に何人もいることに気付く。そして、ここが自殺を繰り返す“常習指定者”が送り込まれる島「自殺島」であることを知る。その直後、未遂者達は飛び降り自殺をする瞬間と死に損ねた者のおぞましい姿を目の当たりにし、一時自殺することを踏みとどまる。“死ねなければ生きるしかない”彼らのサバイバルが始まる。 (wikipedia)

■感想

目が覚めたらいきなり無人島。なんだっっ??ここはどこだっっっ!?!?って、最近良くあるパターン。『7SEEDS』や『サバイバル』なんかに似ている。

作者は『ホーリーランド』の森恒二。『ホーリーランド』でもかなり自身の実体験を基に描かれていたが(ちょいちょいやけにリアルな説明が入る)、本作でも無人島暮らしやサバイバルについて事細かに説明されている。 序盤はとにかく暗い。そもそも自殺志願者の集まりなのでほぼ全員が悲観的。物語の大筋はその自殺志願者達が狩猟採集や農業、酪農等をしながら少しずつ生活基盤を作っていくという話だが、その中で起こる様々な人間模様が本作のメインテーマ。
無人島ということで、当然法もなければ秩序もない。今日、明日を生きるための食料の確保から始まり、集団の中からやがてリーダーが生まれ、民主主義が出来ていく。一人ひとりのキャラに特色を持たせていて、それぞれの役割を担っている。どちらかというと群集劇だが、主人公セイのキャラは確率されており、うまく他のキャラと差別化されている。 テーマの重苦しさは『ホーリーランド』のそれとも似ている。

主人公はとにかく精神的に弱く社会から見放される存在だが、極限状態に置かれると自ら道を開こうと突き進むというスタイルは格闘技がサバイバルに変わっただけで基本路線は同じだ。 難点は画(特に男性キャラ)で、非常に似通っており、バンダナや眼鏡、長髪などの見た目にわかる差がないと見分けが困難あ。 個人的にこのような漫画は好物で新巻が出ると必ず購入するのだが、相方はどうも合わないらしく最初の頃でやめてしまった。暗い雰囲気の漫画が好きではない人には面白くないかも。(ただし、相方も『ホーリーランド』は好きだったようだ)

 

 

 

 

 

 

■こんな人におススメ・・・

  • サバイバルの知識を増やしたい
  • 自殺を考えたことがある
  • 生きる意味を考え直したい

 

 

 

 

 

 

 

 

■ここからネタバレ含むレビュー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ホーリーランド』の時もそうだったけど、この作者、だいぶ病んでた(る)なという印象。

いじめられっこだったのかと思いきや、本人は一時期荒れていた(ヤンキーだった)らしい。しかも漫画家になってからも編集者との軋轢が生まれスランプに陥ったりと意外と精神的に弱い人間なのかもしれない。

さいとうたかおの『サバイバル』、梅図かずおの『漂流教室』などサバイバルを題材とした漫画と比べられることが多いが、それら2作品は基本的に最初から生き残ろうとする姿勢があるのに対し、本作では主人公を含めた登場人物のほぼ全員が生きることを放棄した人間達という点で大きく異なっている。法も秩序もない島で何をするのかは個人の自由。もちろん死ぬことも。あんな島に突然放り込まれたら当然初めに考えるのは水と食料の確保だ。生きるか死ぬかの2択で前者を選んだ者達の目標は同じで、しかも道具も知識もろくにない状態での狩猟採集において協力は避けられない。自殺志願者の多くは孤独な生活を送っていた者達だろうから、初めて自分の意志で参加する集団生活は彼らに新たな居場所を作り出した。おそらくだが、自殺島は政府による自殺志願者の更正施設という見方で間違いないだろう。

主人公のセイの位置付けが興味深い。セイはこの集団のリーダーではないが、主要メンバーの一人ではある。弓を作って鹿を狩り、肉を採って来れるという他の人にはない技能がある故に他のメンバーから一目置かれる存在になった。おそらく作者は主人公を通して作者の実体験を描こうとしたのではないだろうか(作者は実際に猟師の狩に同行した)。サバイバル生活において“狩”は一番難易度が高い。だからこそ狩の描写はかなり細かくて詳しい。そして命をもらって自分達が生きるというある意味一番「生死」に向き合うことができる作業がこの“狩”なのだろう。セイが初めて鹿を狩る話は非常に丁寧に細かく描かれており、作者の強い想い入れを感じた。

自殺島

 

確かにまともに弓を握ったことがない人間が自作の弓と矢でいきなり鹿を狩って血抜きして燻製にして・・・って、漫画とはいえ出来すぎじゃ・・・と始めは思ったけど、よくよく考えてみれば原始時代は何のノウハウもなく手探りで弓作りをして動物を狩って食料にしていたわけだから、人間極限状態に追い込まれたら案外出来てしまうものなのかもしれない。

この漫画は群集劇なのでセイ以外の主要キャラクターも個性があって良いのだが、中でも目を引いたのがボウシ。

 

初登場時、この卑屈っぷり(笑)。現実社会からリストラされた自殺未遂者達の中でもイケてる奴らとイケてない奴らの差が出てしまうという悲しい現実。

自殺島

「持たざる者」ってすごい表現の仕方・・・。久々に私の中でヒットした言葉。 こんな卑屈感満載のボウシだったが、実は手先が器用で卓越した木工技術を持っていた(全然「持たざる者」じゃないじゃん)。そして段々と主要メンバー入りしてきて、セイとも仲良くなっていく。

自殺島

さらに彼女までできて、もはやかなりのリア充。ボウシほどこの島に来て良かった奴はいないんじゃないか? サワダグループとの争いが勃発してからは主に兵器開発担当に。

自殺島

大切な人を守る為に自らの命を投げ出せるほどの男になった。やっぱ自信に満ち溢れた男はいいね。見た目よりもずっと大事だ。こういう男に惚れる気持ちはわからんでもない。

自殺島

自殺島
ついにあのカイを言い負かすまでに!ココまで来ると主人公はボウシでもいいんじゃないか?と思うくらいボウシの存在感がすごい。カイもサワダに「リョウかセイを殺せば勝てる」と進言せずに、ボウシを先に狙ったほうが良かったんじゃないか。 なんかボウシについて熱く語ってしまったが、色んな意味で好きなキャラだ。ダメな奴が成長していく様子は読んでいて気持ちがいい。

他に好きなキャラはスギ。頭が良いからというより常に冷静な判断が出来る人間は良い。このような人間が集団は必要不可欠だ。頭が良く的確な指示が出来るが自分に課された通常の仕事も確りとこなす、企業が欲しがりそうな人材に見えるけどね。

サワダは主人公達の平穏な生活を脅かす嫌な存在だが、サワダがいなかったらこの漫画は駄作になるといって良い。法も秩序もない世界では絶対にサワダのような無法者も現れる。しかもサワダの場合人心掌握術に長けているのでタチが悪い。

自殺島

トモがサワダ側にさらわれた後、サワダに犯されてしまった・・・。

初めて読んだ時は「え?やられちゃったの??」と少々驚いた。さすにが男→男があるとは思っていなかったから・・・。「これはいくらなんでも酷い」と思ったが、サワダの言うことも一理(?)ある。確かにトモはリョウの傍にいてもリョウが自分の事を好きになってくれる確率はほぼゼロだし、況や他の男達も自分を女として見てくれることはないだろう。サワダのように身体だけでも『女』として扱ってくれる人はトモにとっては貴重な存在だ。

自殺島

元中毒者の独自理論

一度でも薬で壊れちゃった人間はやっぱり怖い。考え方が尋常じゃない。サワダはおそらくサメに食われて死んだと思うが、ゾンビのように甦るような予感も・・・。 稲作も出来、ナオの出産も間近でいよいよ物語も佳境に入る。きっと外の世界に出るか否かの選択を迫られる時が来るだろう。その時生きることに前向きになり始めた彼らが、何を選択するのか、引き続き動向を見守って行きたい。

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